米国株投資で税負担を抑えるための工夫5選

はじめに
米国株投資は高い成長性や分散効果を期待できる一方で、税金の扱いが日本株とは異なります。特に、日本在住の投資家は二重課税や為替差益など、知らないうちに税負担を重くしてしまう可能性があります。ここでは、米国株投資における税負担を抑えるための5つの実践的な工夫を紹介します。
1. 外国税額控除を活用する
二重課税を防ぐ基本戦略
米国株の配当金には、米国で通常10%(条約適用後)の源泉徴収が行われます。日本でも配当所得として課税されるため、同じ所得に対して二重に課税が生じます。このときに利用できるのが「外国税額控除」です。確定申告時に、米国で支払った税金を日本の所得税額から控除できる制度です。これを活用すれば、二重課税を実質的に防ぎ、税負担を軽減することができます。
2. NISA(少額投資非課税制度)を上手に利用する
非課税枠での運用で効率化
日本に居住している個人投資家は、NISAを通じて米国株にも投資できます。NISA口座で得られる売却益や配当金は日本の課税対象外となります。米国での源泉徴収分は還付されませんが、日本の税が非課税になるため、トータルの税負担を大きく減らせます。特に、長期保有を前提とした株式やETFの投資には、有効な制度です。
3. 為替差益・差損を管理する
為替変動による課税リスクの回避
米国株の取引では、円からドルへの換金、またはドルから円への戻し時に為替差益または差損が発生します。これも課税対象になる場合があります。日常的に為替レートをチェックし、差益が大きくならないようにタイミングを分けてドル転するなど、計画的な資金移動を行うことが重要です。さらに、為替差損が発生した場合は、所得計算で損失として扱える可能性があるため、年末調整や確定申告時にきちんと記録しておくことが賢明です。
4. 長期保有による譲渡益の最適化
短期売買を避けて効率的に節税
米国株の譲渡益は、日本では分離課税(20.315%)の対象です。利益そのものを非課税にすることはできませんが、頻繁な売買を避け、長期保有によって利益の確定時期を調整することで、課税対象となるタイミングを先延ばしできます。これにより、複利効果をより長く享受できるとともに、将来的に他の損失と通算する機会を持つことも可能です。
5. 損益通算と繰越控除を活用する
損失も節税に役立てる
米国株の取引で損失が出た場合でも、確定申告を行えば、他の株式取引や投資信託で得た利益と損益通算できます。通算後に損失が残れば、翌年以降3年間まで繰り越すことが可能です。この制度を活用することで、将来の利益に対する税負担を引き下げられます。投資の年間損益を整理して、忘れずに申告することが重要です。
まとめ
米国株投資の税負担を抑えるには、制度を正しく理解し、戦略的に運用することが不可欠です。外国税額控除やNISAを活用し、為替リスクも考慮したうえで取引を行えば、税引後リターンを最大化できます。税制の変更や制度改正も随時確認しながら、より効率的な資産運用を目指すことが賢明です。
もっと詳しく
1. 外国税額控除を活用する
具体例
米国株の配当金には、米国内で10%の源泉徴収が発生します。例えば、アップル株を保有し、年間10万円の配当金を受け取ると、米国側で1万円が差し引かれ、日本で残り9万円が入金されます。そのうえで日本でも20.315%の所得税と住民税が課税されるため、このままでは二重課税状態になります。確定申告で「外国税額控除」を適用すれば、米国で支払った1万円分を日本での所得税額から控除でき、実際の負担を軽くすることが可能です。
メリット
外国税額控除の最大の利点は、二重課税を防ぎ、税引後リターンを高められる点です。長期で配当を受け取り続ける投資家にとっては、数%の差でも複利の効果が積み重なり、資産形成に大きな違いをもたらします。また、手続きは確定申告で行うだけなので、個人投資家でも比較的容易に利用できます。
デメリット
一方で、確定申告を行わないと控除が受けられない点や、計算がやや複雑であることがデメリットです。特に多くの銘柄を保有している場合、配当金ごとの源泉徴収額を正確に把握するには、取引明細を整理する手間がかかります。また、控除上限も課税所得の額によって制限されるため、全額が必ずしも控除できるとは限りません。
リスク
税制変更や日米間の租税条約改定によって、外国税額控除の適用条件が変わるリスクがあります。制度を過信しすぎると、思わぬ税負担増につながる可能性があります。
リスクの管理方法
税務情報を定期的に確認し、国税庁や金融庁の公式サイトで最新の税制を把握することが重要です。特に、米国側の源泉徴収率や条約の改正動向は年ごとに変化することもあります。
投資家としての対応策
外国税額控除を確実に活用するためには、配当金の明細を整理し、年間ごとに税額を記録することが有効です。証券会社が発行する年間取引報告書を利用すれば、集計作業を効率化できます。また、毎年確定申告を行うことで、控除額の最適化を図ることができます。
2. NISA制度を活用する
具体例
NISA(少額投資非課税制度)は、一定の投資額までの売却益や配当金が非課税になる制度です。たとえば年間360万円まで投資できる新NISA口座を利用すれば、日本では非課税扱いとなり、配当金や譲渡益に課税されません。米国では10%の源泉徴収が発生しますが、日本側が非課税のため、全体的な税負担は大幅に軽減されます。
メリット
NISAの最大の利点は、非課税によって税引き後の運用効率を高められることです。特につみたて投資枠を活用すれば、長期での複利効果を最大限に活かすことが可能です。また、NISAを利用することで確定申告が不要となり、投資初心者でも手軽に始められます。
デメリット
非課税枠には上限があるため、ある程度の運用額を超えると通常課税口座を併用する必要があります。また、損益通算や繰越控除が適用されない点もデメリットです。つまり、NISA口座で損失が出ても他の口座の利益と相殺できません。
リスク
NISA制度は時限的な制度であり、将来の法改正によって内容が変更されるリスクがあります。制度が改訂されると、非課税期間や上限金額が変動する可能性があります。
リスクの管理方法
制度変更に備え、金融庁の発表を定期的に確認することが求められます。また、非課税枠を超えた投資や売却のタイミングを計画的に管理することが重要です。
投資家としての対応策
まずは長期成長が見込める米国株やETFを中心に、NISA枠を優先的に活用します。定期的にポートフォリオを点検し、非課税期間終了前に売却または特定口座への移管を検討することで、税負担を最小化できます。
3. 為替差益・差損を管理する
具体例
米国株を購入する際には、円をドルに替える必要があります。たとえば、1ドル=140円のときに10,000ドルを購入し、売却時に1ドル=150円になっていた場合、10万円の為替差益が発生します。この利益は課税対象となります。
メリット
為替相場の変動を理解し、円安局面では売却を控える、またはドル建て資産を残すなどの戦略をとることで、課税タイミングを調整できます。適切な管理により利益確定時期をコントロールでき、税金面で柔軟な対応が可能です。
デメリット
為替差損が生じると、ドル建てでは利益が出ていても円換算で損失になる場合があります。短期の為替変動を読み誤ると、資産全体のバランスを崩すリスクもあります。
リスク
為替相場は短期的に大きく動くため、経済指標や金利政策の影響で想定外の損益が発生することがあります。為替変動の大きい局面では、投資タイミングの誤りが損失を拡大させます。
リスクの管理方法
為替ヘッジ付きのETFや外貨預金を組み合わせて為替リスクを分散します。また、外貨資産を短期間で売却しないようにすることで、長期的に平均レートでの安定投資を図れます。
投資家としての対応策
為替差益・差損を明確に把握するため、取引ごとに円換算の記録をつけます。確定申告時には損益を正確に計上できるよう、証券会社の取引履歴を保存しておきましょう。ドルコスト平均法を利用することで為替の影響を緩和するのも有効です。
4. 長期保有で譲渡益の最適化を図る
具体例
短期的な値上がり益を狙う取引では、売却益に対してすぐに課税されます。一方、長期で保有し続けると利益確定のタイミングを先延ばしでき、その間に含み益を再投資して複利成長を期待できます。
メリット
長期保有は税金の支払いを遅らせ、資産の成長を促せる点が大きな利点です。頻繁な売買による取引コストや課税イベントを減らすことで、リターンの目減りを防げます。
デメリット
株価が高値圏で長期間停滞すると、利益確定の機会を逃す可能性があります。また、政策変更による税率上昇リスクを抱え続けることにもなります。
リスク
市場サイクルの変化により、長期保有していた銘柄が成長鈍化するリスクがあります。特に単一企業に集中投資している場合、業績悪化や経営不信が資産全体に影響します。
リスクの管理方法
定期的に銘柄の業績・財務状況を点検し、保有方針を見直すことでリスクを緩和します。セクター分散を取り入れ、複数の成長テーマに投資することも有効です。
投資家としての対応策
長期保有方針を基本としつつ、利益が一定水準に達した銘柄については部分売却を検討します。税務上の計算もしやすくなり、資金を効率的に再投入できる体制を整えましょう。
5. 損益通算と繰越控除を活用する
具体例
米国株取引で年間100万円の損失を出し、日本株で50万円の利益がある場合、その利益と損失を相殺して課税対象を抑えることができます。さらに損失が残れば、翌年以降3年間まで繰り越して控除できる仕組みです。
メリット
マイナスの年でも損失を無駄にせず、今後の利益を減税できる点が最大のメリットです。年間のトータルリターンを税引き後で最適化できるため、安定的な資産形成につながります。
デメリット
繰越控除の適用には確定申告が必須であり、申告を怠ると翌年以降の控除が使えなくなります。また、外国株を含む取引では損益計算が煩雑になりがちです。
リスク
複数の証券口座を使っている場合、損益を正しく統合できないリスクがあります。誤算によって課税額が変わる可能性もあるため、計算ミスは大きな影響を及ぼします。
リスクの管理方法
年間取引報告書を活用し、各口座での損益を整理します。専用の税務ソフトや会計ツールを利用すれば、複雑な損益通算も効率的に処理できます。
投資家としての対応策
年末に利益と損失のバランスを調整する「タックスロスハーベスティング」を活用すると、翌年の税負担を計画的に軽減できます。赤字銘柄を戦略的に売却し、税制上有利な状態を維持することが長期的な資産拡大につながります。
比較してみた
米国株投資で税負担を抑える工夫の「反対のテーマ」について
米国株投資において税負担を軽減する方法がある一方で、逆に税負担を増やしてしまう行動や判断も存在します。ここでは、税負担を抑える工夫と、その反対に位置する「税負担を重くしてしまう行動」を対比しながら整理します。投資初心者がつまずきやすいポイントを明確にし、避けるべき落とし穴を理解することを目的としています。
1. 外国税額控除を活用する vs 控除を申請しない
外国税額控除を利用すれば二重課税を軽減できますが、確定申告を行わない場合は米国側の源泉徴収と日本側の課税がそのまま重なり、税負担が増えます。配当が多い投資家ほど影響が大きく、長期的には手取り額に明確な差が生じます。
2. NISAを活用する vs 課税口座のみで運用する
非課税制度を使わず、すべてを課税口座で運用すると、売却益や配当金に毎回課税されます。特に長期投資では複利効果が削がれ、資産形成のスピードが遅くなります。制度を理解しないまま課税口座だけで運用することは、結果的に税負担を増やす要因になります。
3. 為替差益・差損を管理する vs 為替を無計画に扱う
為替差益が発生すると課税対象になりますが、為替レートを確認せずに頻繁に円⇄ドルを往復すると、意図せず課税イベントを増やすことになります。為替差損の記録を残さない場合も、申告で損失を反映できず、結果的に税負担が重くなります。
4. 長期保有で譲渡益の最適化 vs 短期売買を繰り返す
短期売買を繰り返すと、利益が出るたびに課税され、手数料も積み重なります。複利効果を十分に活かせず、税金の支払いタイミングも早まるため、資産形成の効率が低下します。市場のノイズに振り回されることで、税負担と取引コストの両面で不利になります。
5. 損益通算と繰越控除を活用する vs 損失を放置する
損失を申告せずに放置すると、翌年以降の利益と相殺できず、課税額がそのまま増えます。複数口座を管理せずに損益を把握しない場合も、控除の機会を逃し、税負担が大きくなる典型的なパターンです。
まとめ
税負担を抑える工夫は、制度の理解と記録管理、そして計画的な取引によって成り立っています。反対に、制度を使わない、記録を残さない、無計画に取引するという行動は、税負担を増やす原因になります。投資の成果は市場環境だけでなく、税務上の判断によっても大きく変わるため、避けるべき行動を明確に理解しておくことが重要です。
追加情報
税制改正が投資戦略に与える影響
米国株投資における税負担は、制度そのものが定期的に見直されるため、過去の知識だけで判断すると不利な状況に陥ることがあります。特に外国税額控除の計算方法や非課税制度の枠組みは、数年単位で変更されることがあり、投資家が気づかないまま負担が増えるケースもあります。税制改正の情報は、金融庁や国税庁の発表を定期的に確認し、制度の変化に合わせて投資方針を調整することが重要です。
複数口座を利用する際の注意点
証券会社を複数利用している場合、年間損益の集計が複雑になりやすく、損益通算や繰越控除の計算に誤りが生じることがあります。口座ごとに取引履歴の形式が異なるため、集計作業に時間がかかるだけでなく、申告漏れのリスクも高まります。年間取引報告書を早めに取得し、年末までに損益状況を整理しておくことで、確定申告時の負担を軽減できます。
為替リスクと税務の関係を理解する重要性
米国株投資では、株価の変動だけでなく為替レートの変動も課税対象に影響します。円安局面でドルを円に戻すと為替差益が発生し、課税対象となる場合があります。逆に円高で損失が出た場合でも、記録を残していなければ損益通算に反映できません。為替の動きを投資判断の一部として捉えるだけでなく、税務上の影響を把握することが、長期的な資産形成において欠かせません。
配当再投資と税負担の関係
米国株の配当を再投資する場合、受け取った時点で米国側の源泉徴収が発生し、日本でも課税対象となります。再投資によって資産を増やす効果は期待できますが、配当金が多いほど税負担も増えるため、配当再投資型の戦略が必ずしも効率的とは限りません。配当を重視する投資家は、税引き後の実質的なリターンを基準に銘柄選定を行うことが求められます。
長期保有と売却タイミングの最適化
長期保有は課税タイミングを遅らせる効果がありますが、株価が大きく上昇した後に売却をためらうと、相場の反転で利益を失う可能性があります。税負担を理由に売却を先延ばしにするのではなく、資産全体のバランスや市場環境を踏まえて判断することが重要です。部分売却を活用すれば、税負担を分散しつつリスク管理も行えます。
記録管理の重要性と実務的な工夫
米国株投資では、配当履歴、為替レート、売買記録など、税務処理に必要な情報が多岐にわたります。これらを日々の取引の中で整理しておくことで、確定申告時の負担を大幅に軽減できます。取引ごとにメモを残す、月ごとに損益を集計するなど、継続しやすい方法を取り入れることが効果的です。管理を怠ると、後から情報を集める手間が増え、申告ミスの原因にもなります。
制度に依存しすぎない投資姿勢
税制優遇は資産形成を助ける仕組みですが、制度のメリットだけに頼ると判断を誤ることがあります。控除の上限や適用条件を正確に把握しないまま投資を進めると、想定外の税負担が発生することもあります。制度はあくまで補助的なものであり、投資判断の中心はリスク管理と資産配分に置くことが望ましいといえます。
米国株投資の税負担を減らすためのQ&Aガイド
米国株への投資は魅力的ですが、日本株とは異なる税金の仕組みがあり、知らないまま取引すると手取りが減ってしまうことがあります。この記事では、米国株投資で税負担を抑えるためのポイントを、初心者にも理解しやすいQ&A形式で整理しました。具体例を交えながら、今日から実践できる対策をまとめています。
Q1. 米国株の配当はなぜ二重課税になるのですか?
A. 米国株の配当金には、まず米国で10%の源泉徴収が行われます。その後、日本でも配当所得として課税されるため、同じ配当に対して2回課税される仕組みになっています。この負担を軽減するために利用できるのが「外国税額控除」です。確定申告で米国で支払った税金を日本の所得税から差し引くことができ、手取りが増えます。
Q2. NISA口座で米国株を買うと税金はどうなりますか?
A. NISA口座で得た売却益や配当金は日本では非課税になります。ただし、米国側の10%の源泉徴収は戻りません。それでも日本の課税がゼロになるため、トータルの税負担は大きく軽減されます。長期保有を前提とした米国株やETFとの相性が良い制度です。
Q3. 為替差益にも税金がかかるって本当ですか?
A. 本当です。円をドルに替えたり、ドルを円に戻したりする際に差益が出ると、その利益は課税対象になります。例えば、1ドル=140円で1万ドルを購入し、1ドル=150円で円に戻すと10万円の差益が発生します。為替差損が出た場合は損益通算に使える可能性があるため、取引ごとに記録を残すことが重要です。
Q4. 長期保有すると税金面で有利になるのはなぜですか?
A. 長期保有をすると、利益確定のタイミングを先延ばしできるため、課税される時期を遅らせることができます。その間、含み益を再投資して複利効果を高められる点がメリットです。頻繁に売買するとその都度課税され、手数料も増えるため、結果的にリターンが減りやすくなります。
Q5. 損益通算と繰越控除はどう役立つのですか?
A. 米国株で損失が出ても、確定申告をすれば日本株や投資信託の利益と相殺できます。さらに損失が残れば、翌年以降3年間まで繰り越して控除できます。例えば、米国株で100万円の損失、日本株で50万円の利益があれば、課税対象はゼロになります。申告を忘れると控除が使えなくなるため注意が必要です。
Q6. 税制改正は投資にどんな影響がありますか?
A. 税制は数年ごとに見直されるため、過去の知識だけで判断すると不利になることがあります。外国税額控除の計算方法やNISAの枠組みが変わることもあるため、金融庁や国税庁の発表を定期的に確認し、投資方針を調整することが大切です。
Q7. 複数の証券口座を使うと税務が難しくなるのはなぜですか?
A. 証券会社ごとに取引履歴の形式が異なるため、損益の集計が複雑になりやすいからです。損益通算や繰越控除の計算に誤りが生じると、税負担が増える可能性があります。年間取引報告書を早めに取得し、年末までに整理しておくと申告がスムーズになります。
Q8. 初心者が特に気をつけるべきポイントは何ですか?
A. 税金の仕組みを理解しないまま取引すると、思わぬ負担が発生しやすい点です。特に、外国税額控除の申告漏れ、NISAの誤解、為替差益の見落とし、損益通算の計算ミスなどは初心者がつまずきやすい部分です。取引ごとに記録を残し、制度を正しく理解することが重要です。
まとめ
米国株投資では、日本株とは異なる税金の仕組みを理解することが欠かせません。外国税額控除、NISA、為替差益の管理、損益通算などを正しく活用すれば、税引き後のリターンを大きく改善できます。まずは取引記録を整理し、確定申告の準備を整えることから始めると、税負担を抑えた効率的な資産形成につながります。
あとがき
税金の仕組みを理解することの難しさ
米国株に投資を始めた当初、最もとまどったのは税金の扱いでした。日本株しか取引していない頃は、配当金や売却益の税金が自動的に計算され、特に意識することは多くありませんでした。しかし、米国株では日本と米国の2か国で課税が行われるため、同じ利益でも手元に残る金額が思った以上に少ないと感じたことがあります。外国税額控除の存在を知るまで、二重に課税されている状態に気づかず、後から計算を見直して損をしていたことに気がつきました。税金の仕組みを理解しきれないまま取引を進めることが、思わぬ不利益を招くということを経験から学びました。
確定申告の手間と向き合うこと
外国税額控除を受けるためには確定申告が必要になりますが、その手続きは初めてのときにはかなり手間に感じました。証券会社ごとの報告書を集め、ドル建ての配当を円換算しながら入力する作業は時間がかかります。年度ごとに為替レートを確認する必要があり、細かい数字の確認を怠ると計算が狂ってしまうこともありました。効率を重視して自分なりの整理方法を考え、取引明細を年ごとにまとめて保存するようになりましたが、最初の頃は申告の時期になるたびに不安を感じていました。この経験から、取引の都度メモを残すことが大切だと実感しました。
非課税制度を使うことの理解不足
NISA口座を利用すれば非課税で運用できることは知っていましたが、初めは仕組みをよく理解せずに使ってしまいました。非課税だからと言って、すべての負担がなくなるわけではなく、米国側では源泉徴収が行われるという事実を後から知りました。また、NISAでは損失を他の口座と通算できないため、損が出たときの扱いに困ったことがあります。制度の便利さばかりに目が行き、適用範囲を正確に理解していないと、思い違いで損をすることがあるという反省が残りました。
為替変動に対する感覚のずれ
米国株の取引を始めてから、為替の影響の大きさをあらためて感じました。円高の時期にドルを購入し、後に円安になると為替差益が生じますが、その利益にも課税が発生するという点を見落としていたことがありました。ドルで見れば利益が出ていなくても、円に換算すると差益が出る場合があり、申告の際に思わぬ税負担が生じた経験があります。逆に、円高で損失となった際は、損益通算の手続きに慣れていなかったため、確定申告での処理をあやまったこともあります。為替の変動を単に投資成果の一部として見ていた時期がありましたが、それ以上に税務上の影響が大きいことに気づいたのは失敗を経験してからでした。
長期保有の判断と反省
米国株は成長性が高いと考えて長期保有を続けていましたが、株価が一時的に大きく上昇したときに売却をためらったことで、結果的に利益を減らしたことがあります。税金を気にして売らずに持ち続けた結果、相場が下がり、税よりも損失の方が大きくなったのです。長期保有が有利になる場合も確かにありますが、税金のことだけにとらわれ過ぎて、市場全体の動きを見誤ると資産を減らすこともあります。この経験から、課税の有無よりも資産全体のバランスを意識するべきだったと感じました。
損益通算を利用する際の失敗
年間の取引で損益通算をしようとした際、複数の証券口座を使っていたため、合算が上手くできなかったことがありました。損失の多い口座と利益の出ている口座の計算を別々に行ってしまい、確定申告で思ったように控除が効かないという結果になりました。証券会社によって報告書の表示方法が違い、どちらを基準にするか迷ったのも原因でした。この出来事以降、取引の口座を整理し、損益通算を行いやすいように体制を整えました。制度を正しく使うには、単に知識を持つだけでなく、実際の運用方法に合わせて準備することが欠かせないと痛感しました。
制度に頼りすぎた結果
税制上の優遇措置は投資を支える仕組みではありますが、安易に依存すると判断を誤ることもあります。外国税額控除を過信していた時期があり、どの程度まで控除を受けられるかを確認せずに投資を増やしていました。結果として控除の上限を超えて適用されなかった部分が発生し、思ったよりも税金が多くかかってしまいました。制度のメリットばかりを見て、条件や上限を細かく把握していなかったことが失敗の原因でした。内容を理解した上で利用範囲を慎重に考える必要を学びました。
管理の手間を軽く見ていた
米国株は一見シンプルに取引できるようでいて、配当や為替など複数の要素が複雑に絡み合います。初めのうちは管理の手間を軽く見積もり、取引明細や配当履歴をそのまま放置していました。確定申告の時期になって過去の記録を探すのに時間がかかり、整理されていない情報を集めるのに苦労しました。この経験がきっかけで、取引メモを付け、自分なりに税務記録をまとめる習慣を身につけるようになりました。作業を怠ることが後の負担に直結するという実感が得られた点は、良い教訓でした。
初心者の方への共感
米国株に興味を持つ初心者の方は、税金や為替の仕組みにとまどうことが多いと思います。私自身も同じように理解できない部分が多く、何度も申告や計算で悩みました。税に関するルールは複雑で、年度ごとに変化する要素もあり、すぐに正しい答えを出すのは難しいものです。最初は間違いを恐れるよりも、時間をかけて仕組みを理解することが大切だと後になって感じます。誰もが最初からすべてを把握できるわけではないことを、実際の経験を通じて実感しました。
税制改正の影響を見落とした過去
税制度は定期的に改正され、過去の知識に頼り続けてしまうと対応が遅れることがあります。外国税額控除の申告方法が一部変更された年に、その情報を確認していなかったために、控除額の計算が誤ってしまったことがありました。普段から経済や投資関連の情報には関心を持っていたつもりでしたが、税制度の変化までは注意が及んでいなかったのです。法改正の確認を怠ると、せっかくの制度をうまく活用できないことがあるという反省が残りました。
まとめ
米国株投資における税金対策は、知識だけで完結するものではなく、実際の取引を通じて理解が深まるものだと感じています。外国税額控除、NISAの利用、為替管理、損益通算など、ひとつひとつに手間と判断が伴います。その中で、間違いや迷いは誰にでも起こり得ることです。大切なのは、失敗をそのままにせず、次にどう行動するかを考えることだと思います。私自身、多くの反省を通して、税金や制度の理解が投資全体の安定につながることを実感しました。税に関する知識は難しく感じるかもしれませんが、少しずつ経験を積み重ねることで、無理なく向き合うことができるようになると感じています。

