
米国株投資でよく使われる便利なスクリーニング方法5選
米国株投資において、適切な銘柄を選択することは成功の鍵となります。ニューヨーク証券取引所とナスダック証券取引所に上場している数千社の中から、自分に合った銘柄を見つけ出すのは容易ではありません。そこで、多くの投資家が活用しているのがスクリーニング方法です。
スクリーニングとは、特定の条件に基づいて銘柄を絞り込む作業のことを指します。この方法を使うことで、膨大な数の銘柄の中から自分の投資戦略に合った候補を効率的に見つけ出すことができます。
1. 自己資本利益率(ROE)によるスクリーニング
概要
自己資本利益率(ROE)は、企業が株主資本をどれだけ効率的に利益に変換しているかを示す指標です。ROEが高い企業は経営効率が良いとされ、投資家にとって魅力的な選択肢となります。
具体例
多くの投資家は、ROEが15%以上の企業をスクリーニングの対象とすることがあります。例えば、ある技術企業のROEが20%である場合、この企業は株主資本を効率的に利用して利益を生み出していると考えられます。
メリット
ROEによるスクリーニングは、企業の収益性と効率性を同時に評価できる点が大きなメリットです。高いROEは、企業が限られた資本を効果的に活用し、株主価値を創出していることを示唆します。
難しいポイント
ROEは業界によって大きく異なる場合があり、単純な数値比較だけでは適切な評価ができないことがあります。また、一時的な要因でROEが高くなっている可能性もあるため、注意が必要です。
難しいポイントの克服方法
ROEを評価する際は、同業他社との比較や過去数年間のトレンドを分析することが重要です。また、ROEの構成要素(売上高利益率、総資産回転率、財務レバレッジ)を個別に分析することで、より深い洞察を得ることができます。
2. 株価収益率(PER)によるスクリーニング
概要
株価収益率(PER)は、企業の株価が1株当たり利益の何倍になっているかを示す指標です。PERが低い銘柄は割安と考えられる一方、高いPERは将来の成長期待が高いことを示唆する場合があります。
具体例
例えば、ある企業の株価が100ドルで、1株当たりの利益が5ドルの場合、PERは20倍となります。投資家は自身の投資スタイルに応じて、「PERが20以下」や「業界平均PERの1.5倍以下」といった条件でスクリーニングを行うことがあります。
メリット
PERによるスクリーニングは、株価の割安度を簡単に比較できる点が大きなメリットです。また、同業他社との相対的な評価や、市場全体の平均との比較が容易に行えます。
難しいポイント
PERは企業の成長段階や業界特性によって大きく異なるため、単純な数値比較だけでは適切な評価ができない場合があります。また、一時的な要因で利益が変動している場合、PERも大きく変動する可能性があります。
難しいポイントの克服方法
PERを評価する際は、同業他社との比較や過去の平均値との比較を行うことが重要です。また、将来の利益予想に基づく予想PERも考慮に入れることで、より包括的な評価が可能になります。さらに、PERと企業の成長率を組み合わせたPEG比率を用いることで、成長性を考慮した評価ができます。
3. 株価純資産倍率(PBR)によるスクリーニング
概要
株価純資産倍率(PBR)は、企業の株価が1株当たり純資産の何倍になっているかを示す指標です。PBRが1を下回る銘柄は、理論上、純資産価値よりも安く取引されていることになります。
具体例
例えば、ある企業の株価が50ドルで、1株当たりの純資産が40ドルの場合、PBRは1.25倍となります。バリュー投資家は「PBRが1以下」といった条件でスクリーニングを行うことがありますが、成長株投資家はより高いPBRを許容する傾向があります。
メリット
PBRによるスクリーニングは、企業の資産価値に対する株価の割安度を簡単に評価できる点が大きなメリットです。特に、製造業や金融業など、資産の価値が重要な業種において有効です。
難しいポイント
PBRは業種や企業の成長段階によって大きく異なるため、単純な数値比較だけでは適切な評価ができない場合があります。また、無形資産の価値が高い企業(例:IT企業)では、PBRが実際の企業価値を正確に反映しない可能性があります。
難しいポイントの克服方法
PBRを評価する際は、同業他社との比較や過去のトレンド分析を行うことが重要です。また、企業の収益性指標(ROEなど)と組み合わせて評価することで、より包括的な分析が可能になります。さらに、無形資産の価値が高い企業を評価する際は、他の指標(例:PER、売上高成長率)も併せて考慮することが重要です。
4. 配当利回りによるスクリーニング
概要
配当利回りは、株価に対する年間配当金の割合を示す指標です。インカム重視の投資家にとって、高配当利回りの銘柄は魅力的な投資対象となります。
具体例
例えば、株価が100ドルで年間配当金が3ドルの企業の配当利回りは3%となります。「配当利回り3%以上」といった条件でスクリーニングを行うことで、安定的な配当収入が期待できる銘柄を絞り込むことができます。
メリット
配当利回りによるスクリーニングは、定期的な収入を重視する投資家にとって非常に有用です。また、配当の安定性や成長性を評価する上でも重要な指標となります。
難しいポイント
高配当利回りが必ずしも良い投資対象であるとは限りません。企業の財務状況が悪化し、株価が下落した結果、見かけ上の配当利回りが上昇している可能性もあります。また、配当の持続可能性や将来の成長性も考慮する必要があります。
難しいポイントの克服方法
配当利回りを評価する際は、配当の持続可能性を確認することが重要です。配当性向(純利益に対する配当金の割合)や過去の配当トレンドを分析することで、配当の安定性を評価できます。また、企業の財務健全性や成長性も併せて分析することで、より包括的な評価が可能になります。
5. 時価総額によるスクリーニング
概要
時価総額は、企業の規模を示す指標の一つです。大型株は安定性が高い一方、小型株は高い成長性を秘めている可能性があります。投資家は自身のリスク許容度に応じて、時価総額でスクリーニングを行うことがあります。
具体例
例えば、「時価総額100億ドル以上の大型株」や「時価総額10億ドル未満の小型株」といった条件でスクリーニングを行うことができます。大型株は一般的にS&P 500やダウ工業株30種平均などの主要指数に含まれる企業が対象となります。
メリット
時価総額によるスクリーニングは、投資家のリスク選好に応じた銘柄選択を可能にします。大型株は一般的に安定性が高く、小型株は高い成長性を持つ可能性があるため、投資戦略に応じた銘柄の絞り込みが容易になります。
難しいポイント
時価総額だけでは企業の質や将来性を判断することはできません。大型株であっても成長が鈍化している場合や、小型株であっても安定した業績を上げている企業もあります。また、市場の変動により時価総額が大きく変動する可能性もあります。
難しいポイントの克服方法
時価総額によるスクリーニングを行う際は、他の財務指標や成長性指標と組み合わせて評価することが重要です。例えば、PERやROEなどの指標と併せて分析することで、企業の質や将来性をより適切に評価できます。また、業界内での相対的な位置づけや市場シェアなども考慮に入れることで、より包括的な分析が可能になります。
まとめ
米国株投資におけるこれら5つのスクリーニング方法は、効率的な銘柄選択のための強力なツールです。ROE、PER、PBR、配当利回り、時価総額などの指標を組み合わせることで、自身の投資戦略に合った銘柄を絞り込むことができます。
しかし、スクリーニングはあくまでも出発点であり、選別された銘柄について詳細な分析を行うことが重要です。各指標には長所と短所があり、単一の指標だけで投資判断を行うことは危険です。複数の指標を組み合わせ、企業の財務状況、事業モデル、競争力、経営陣の質なども総合的に評価することが、成功的な投資につながります。
また、市場環境や個別企業の状況は常に変化しているため、定期的に投資判断を見直す必要があります。スクリーニング条件も、市場の状況や自身の投資目標の変化に応じて適宜調整することが重要です。
さらに、分散投資の原則を忘れずに、単一の指標や条件に過度に依存しないようにすることも大切です。地域、業種、企業規模などを考慮しながら、バランスの取れたポートフォリオを構築することが、リスク管理の観点からも重要です。
最後に、スクリーニングツールの使用方法に習熟することも、効率的な銘柄選択には欠かせません。多くの証券会社やファイナンシャルウェブサイトが提供するスクリーニングツールの機能を十分に理解し、活用することで、より精度の高い銘柄選択が可能になります。
スクリーニングを賢く活用しつつ、総合的な判断を行うことで、より洗練された投資戦略を構築することができるでしょう。米国株投資の世界は広大で複雑ですが、これらのツールと知識を適切に組み合わせることで、個人投資家でも効果的な投資決定を行うことが可能になります。
参考サイト: マネカレ(日本語)
あとがき
スクリーニングの実践を通じて学んだこと
米国株投資におけるスクリーニング方法を実践してきた中で、多くの学びと反省点がありました。これらの経験は、投資アプローチの改善と自己成長につながりました。
過度の依存によるリスク
初めてスクリーニングを活用した際、数値指標に過度に依存してしまい、企業の本質的な価値を見逃すことがありました。例えば、高ROEの企業に注目するあまり、一時的な要因で数値が上昇している企業を選んでしまい、長期的には期待通りのパフォーマンスが得られないことがありました。
市場環境の変化への対応
スクリーニング条件を固定化してしまい、市場環境の変化に適切に対応できなかったことがあります。例えば、景気後退期に入ったにもかかわらず、成長株中心のスクリーニング条件を維持し続けたため、ポートフォリオの下落リスクが高まってしまいました。
業界特性の考慮不足
初期の頃は、業界特性を十分に考慮せずにスクリーニングを行っていました。例えば、PBRの基準を全業種で同一に設定していたため、資産集約型産業と知識集約型産業を適切に評価できていませんでした。
反省と改善点
これらの経験を通じて、以下の点を重視するようになりました:
- スクリーニングは投資プロセスの出発点であり、詳細な企業分析の代替にはならないこと
- 市場環境や経済サイクルに応じて、スクリーニング条件を柔軟に調整する必要があること
- 業界特性や企業の成長段階を考慮し、適切な指標と基準値を選択すること
- 定量的指標だけでなく、定性的な要素(経営陣の質、競争優位性など)も重視すること
- スクリーニング結果を鵜呑みにせず、常に批判的思考を持って評価すること
今後の展望
スクリーニングは強力なツールですが、完璧ではありません。今後も市場の変化や新たな分析手法に注目し、投資アプローチを継続的に改善していく必要があります。同時に、自身の投資哲学や目標を常に意識し、それらに合致したスクリーニング方法を模索し続けることが重要だと考えています。
投資の世界には絶対的な正解はなく、常に学び続ける姿勢が求められます。これからも謙虚に、そして慎重に投資活動を続けていきたいと思います。
記事を書いた人

こんにちは!私は山田西東京と申します。著作物とかはないですが、米国株の投資の中級者に成長し、一戸建て一軒とマンション一部屋を所有することができました。現在、株式投資と仮想通貨に情熱を持って取り組んでいます。リスク管理に徹することが成功の近道と信じています。
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