はじめに
米国株に投資するということは、世界最大の経済圏であるアメリカの企業に出資するということです。アメリカには多くの優良企業があり、その中から自分の投資目的やスタイルに合った銘柄を選ぶことができます。しかし、米国株に投資するには、日本株とは異なる知識や情報が必要です。この記事では、米国株の選び方について、情報収集と分析の方法を紹介します。
情報収集の方法
米国株の情報収集には、主に以下の3つの方法があります。
公式サイトや財務報告書などの企業情報
ニュースサイトやブログなどのメディア情報
アナリストやファンドマネージャーなどの専門家情報
企業情報
企業情報とは、企業自身が発表する情報です。例えば、公式サイトや財務報告書(10-Kや10-Qなど)、プレスリリース、カンファレンスコールなどがあります。これらの情報は、企業の事業内容や戦略、財務状況、将来見通し、リスク要因などを知るために重要です。特に財務報告書は、米国証券取引委員会(SEC)に提出される法的な文書であり、企業の真実を知るために欠かせません。財務報告書は、SECの公式サイト(EDGAR)や企業の公式サイトで閲覧できます。
メディア情報
メディア情報とは、企業以外の第三者が発信する情報です。例えば、ニュースサイトやブログ、ポッドキャスト、SNSなどがあります。これらの情報は、企業の最新動向や市場環境、競合分析、トレンド分析などを知るために役立ちます。特にニュースサイトは、米国株市場に影響を与える政治や経済、社会的な出来事を追うために必要です。ニュースサイトやブログは、インターネットで検索できますが、有料サービスもあります。ポッドキャストやSNSは、個人的な意見や感想も含まれることが多いので、参考程度にすることが望ましいです。
専門家情報
専門家情報とは、投資関連の職業に従事する人々が発信する情報です。例えば、アナリストやファンドマネージャー、コンサルタントなどがあります。これらの情報は、企業の評価や予測、投資判断などを知るために参考になります。特にアナリストは、各企業に対して売り上げや利益などの数値的な予測(コンセンサス)や目標株価(ターゲット)を発表します。アナリストの情報は、投資情報サイトや証券会社のサイトで閲覧できますが、有料サービスもあります。ファンドマネージャーやコンサルタントは、自分の投資哲学や戦略、ポートフォリオなどを公開することがあります。これらの情報は、書籍や雑誌、インタビューなどで入手できます。
分析の方法
米国株の分析には、主に以下の2つの方法があります。
企業分析(ファンダメンタルズ分析)
市場分析(テクニカル分析)
企業分析
企業分析とは、企業の事業内容や財務状況、成長性などを評価する方法です。企業分析には、さらに以下の2つの方法があります。
会計分析
戦略分析
会計分析
会計分析とは、企業の財務報告書を基にして、企業の収益力や資産効率、財務安定性などを数値的に分析する方法です。会計分析には、以下のような手法があります。
比率分析
現金流量分析
財務諸表再編成
比率分析とは、財務諸表から算出される様々な比率(指標)を用いて、企業の財務状況を評価する方法です。例えば、売上高成長率や営業利益率などの収益性指標、総資産回転率や資本利益率などの資産効率指標、自己資本比率や流動比率などの財務安定性指標などがあります。これらの比率を用いて、企業の過去や現在の状況を把握したり、他社や業界平均と比較したりすることができます。
現金流量分析とは、企業が発生させる現金流量(キャッシュフロー)を基にして、企業の収益力や成長性を評価する方法です。現金流量は、財務諸表から算出される以下の3つに分類されます。
営業活動から生じる現金流量(オペレーティング・キャッシュフロー)
投資活動から生じる現金流量(インベスティング・キャッシュフロー)
財務活動から生じる現金流量(フィナンシング・キャッシュフロー)
これらの現金流量を用いて、企業がどれだけ自己資金を生み出し(フリー・キャッシュフロー)、それをどう使っているか(キャッシュフロー・ステートメント)を分析します。また、現金流量から将来の収益や価値を予測することもできます(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)。
財務諸表再編成
財務諸表再編成とは、企業が公表する財務諸表を自分で修正して、より正確な財務状況を把握する方法です。この方法は、会計基準や企業の方針によって財務諸表が歪められている場合に有効です。例えば、減価償却の方法や在庫評価の方法などは、企業によって異なりますが、これらは財務諸表に大きな影響を与えます。そこで、財務諸表再編成では、これらの要素を統一的な基準に揃えて、財務諸表を修正します。このようにして、企業の真の収益力や資産価値を見ることができます。
財務諸表再編成の方法は、主に次の3つです。
1. 売上高再編成
売上高再編成では、売上高に含まれる非現金要素や非経常要素を除外して、純粋な現金売上高を計算します。非現金要素とは、例えば、売掛金やリース収入などのことで、現金が入っていないのに売上高として計上されているものです。非経常要素とは、例えば、特別損益や売却益などのことで、通常の事業活動とは関係ないものです。これらの要素を除外することで、企業の本来の売上力を見ることができます。
2. 営業利益再編成
営業利益再編成では、営業利益に含まれる非現金要素や非経常要素を除外して、純粋な現金営業利益を計算します。非現金要素とは、例えば、減価償却費や株式報酬費用などのことで、現金が出ていないのに費用として計上されているものです。非経常要素とは、例えば、リストラ費用や訴訟費用などのことで、通常の事業活動とは関係ないものです。これらの要素を除外することで、企業の本来の収益力を見ることができます。
3. 資産再編成
資産再編成では、資産に含まれる過大評価や過小評価されている要素を修正して、真の資産価値を計算します。過大評価されている要素とは、例えば、有形固定資産や無形固定資産などのことで、市場価値よりも高く計上されているものです。過小評価されている要素とは、例えば、在庫や債権などのことで、市場価値よりも低く計上されているものです。これらの要素を修正することで、企業の本来の資産価値を見ることができます。
財務諸表再編成は、企業分析において重要な手法です。しかし、財務諸表再編成には一定の判断や仮定が必要であり、再編成の方法や基準は分析者によって異なる場合があります。そのため、財務諸表再編成の結果は、あくまで参考値として用いるべきであり、絶対的なものではないことに注意する必要があります。